第31章 Treat&Treat (逆ハー)
「離せと言われて離す馬鹿がどこにいる」
バージルは言いながら、今度こその唇に口づけようと顔を寄せた。ダンテを睨んだまま、まるで噛み付くように薄く唇を開ける。
ちょっとバージルさん、わざとダンテを煽ってるでしょう。
しかし目の前で堂々とやられては、ダンテも黙ってはいない。
バージルの顔をの肩越しに手で押し返した。
「……っ」
「や、め、ろ!! ふざけんなあんた!」
顔を押され、バージルはさすがにどうしようもならずに一旦顔を離した。
その一瞬の隙にダンテはを抱き締め、後ろからの頬の怪我に唇を寄せた。
「痛…っ」
ほっとして油断したはダンテの胸に倒れ込むような形になり、かすかな痛みに顔を歪める。
ダンテはそれに構わず、熱い舌を迷わず這わせた。鉄の味がする部分を残らず舐め取る。
血が美味い。吸血鬼にでも転職した方がいいだろうか。
「うぁ…つ……っ」
「我慢しろ。消毒だ」
「何が消毒だ」
声と同時に飛んで来るバージルの拳。
ダンテはそれを紙一重で避けた。
「あっぶねえな…当たったらどうすんだよ」
「当てるつもりでやっている」
言って、バージルは頬の怪我を治すのは諦めたようで、ダンテに先を越されないようの手を取った。
「あっ! ずりい!」
しかし一足早く、ダンテも同じ手を掴み、二人は睨み合った。
「…………」
にはもう言い争いに参加する気も起きない。握られた手を、諦めたように見つめた。
もうとっくに血は止まっているのだが、この二人にはきっと関係ないのだろう。
「あの…もう私行ってもいいですか」
「「だめだ」」
「……」
全く同じ声でハモられた。
解放される時は遠そうだ。
2006/01/08