第31章 Treat&Treat (逆ハー)
「バージルてめぇ…何す…」
「それはこちらの台詞だ」
あからさまに努気を含んだバージルの声。ダンテを睨みつけて、散らかったがらくたをあごで示す。
「そこの物は全部お前のものだろう。お前のせいでは怪我をしたんだぞ。それをわかっているのか」
「わかってるさ! だから俺自ら怪我を治そうとしてたんじゃねえか!」
「黙れ。の顔にまで傷をつけるとは愚か者が。貴様はさっさとそのがらくたを片付けろ、の怪我は俺が診る」
「なっ…あんた実はそれがやりたいだけだろ!」
ダンテが憤慨して地団駄を踏む。
バージルはふっと余裕の笑みを浮かべた。
「弟の愚行を叱り、責任を持って怪我を治療する。これのどこが悪い? 立派な兄の判断だろう」
そう言って、バージルはの手を引いてソファまで連れて来た。
は、無駄だろうなと思いつつも言ってみる。
「あの、バージル…私大丈夫だから」
すると彼は、少し驚いた顔で振り向いた。
気の毒そうにを見つめると、優しく頬に手を添える。
「…別にダンテを庇ってやらなくてもいいんだぞ。痛かっただろう」
「や、ちがく…て」
反論を試みるが、バージルに見つめられて語尾が小さくなっていく。
見つめるアイスブルーの瞳に釘付けになり、の身体は縛られたように動けなくなった。
―――ずるい。
彼は自分の魅力をわかっていて、こんな事をするのだろうか。
ダンテはともかく、頭のいいバージルの事だ。
自分の魅力を武器にする。それもあり得る気がした。