第29章 悪魔よりも強い人 (逆ハー)
本気だ。
それを見てとった二人は、途端に慌てた。
「おっ怒るなよ!」
「悪かった。つい…」
しかしの顔は泣きそうにしかめられたままで。
俯いて、拗ねたようにそっぽを向き。
ダンテとバージルは更に慌てる。
ダンテは屈み込むと、目線を合わせようとしないの顔を覗き込んだ。
「泣くな! 機嫌直せよ! な?」
「……………」
「…」
ダンテは必死に謝り。
バージルは途方に暮れ。
今更私の事気にかけたって遅いんだから。もう知らない。
そう思うのに、二人に悪気はないことはわかっているし、傷つけるのも落ち込ませるのも本意ではなくて。
あぁ、私って二人に甘い。
がダンテに視線を向けると、困った顔が目に入った。
叱られた犬みたい。それも大型犬ね。
きゅーん…、と鳴き声でも聴こえてきそうな気がして、は思わず笑ってしまいそうになった。それを隠すように、目の前のダンテに抱きつく。
「…私は、あなた達のおもちゃじゃない」
「そうだな。…俺が悪かった」
謝罪を述べるものの、ダンテのその表情はが抱きついてきた事に若干嬉しそうだ。
現金なやつめ。
しかしそれに、バージルが待ったをかける。
「待て。俺は抱きついてもらえないのか」
「残念だったな。あんたの貧弱な身体にゃ抱きつきたくないってよ」
「誰が貧弱だ」
はそれについに笑い出し、ダンテから離れるとふわりとバージルにも抱きついた。
ダンテは引き止めようとしたが、ぐっと留まる。
バージルはの身体を受け止めると、優しく大切そうに抱き締めた。
が来てくれた事に頬がゆるむ。
柔らかい暖かい身体。心までもが暖まる。
「悪かった」
「ううん。バージルならわかってくれてるって信じてる」
が軽く首を振ると、仄かないい香りがした。
バージルはそれに酔うように目を閉じると、の首筋に唇を寄せる。
そして目敏くそれを見つけたダンテは叫んだ。
「あー! てめえどさくさに何してやがる!」
「黙れ。邪魔をするな」
「邪魔するだろ! 離れろよ!」