第28章 捕縛者
外出から帰って来ると、ドアを開けた瞬間仁王立ちで腕組みをしたバージルがいた。
あまりに驚いて声が出なくて、ドアを開けたままただぽかんと見つめる。
何だか怒っているようだった。表情はいつもと変わらず読めないものの、纏う雰囲気が違った。
少しだけ眉をひそめて見下ろしてくる視線。
これにじっと耐えられる人は多分いないだろう。私は口を開く。
「どうしたの?」
尋ねても、彼は無言だった。
ただ私の肩を優しく包んで家の中へ促すと、ドアをゆっくりと閉めた。
それに少しだけ安堵する。
「…どこに行っていた」
かちゃり、と鍵の閉まる音と声。
「え、買い物に…」
「一人でか?」
背中にひやりとしたものが滑った気がした。
答えがわかっていながらの尋問だ、これは。
「途中で、友達と会って…」
「女か? 男か?」
「………男」
低迷する沈黙。重たい、重たい。
何も悪い事はしていないはずなのに、妙にいたたまれなくなった。
なぜ友人と会った事を知っているのかはこの際問題ではない。私自身もわからない。
聞いても答えてくれなかったから。
「男と一人で会う時は必ず連絡しろと言ったはずだが」
普段通りの滑らかな口調が恐怖を煽る。
「会うと、思ってなかったし…電話できるような雰囲気でも…」
「電話など2、3分で済む事だろう。男と会って余りの楽しさに俺の事など忘れたか?」
「違っ…」