第2章 いってらっしゃい。 [幸村精市]
「精市落ち着いて聞いて」
「どうしたの?」
「私ね、余命1ヶ月って言われちゃったの」
俺の大好きな彼女から言われた衝撃の一言。
いきなりすぎてなんの感情も沸き上がらなかった。
全国大会も終り、部活も引退し、
彼女との時間がたくさん作れるなと思っていた矢先のことだった。
「でもね、手術すれば、治るかもしれないって。」
「そう…か、手術受けるの…?」
彼女の顔が見れない。
君は今どんなに気持ちなのだろう。
開き直って笑っている?
怖くて泣いている?
あと少ししか生きれなくて悲しんでいる?
こんなことしか言えない俺に怒っている?
「もちろん、受けるよ!
精市ともっとたくさん一緒にいたいし、私やりたいことがあるの。」
「やりたいことって?」
「医者!いろんな人を助けたい!
そして精市がいつ倒れても平気なようにね!」
君は少しイジワルに微笑んだ。
「そうだね、前からいってたもんね」
俺が倒れた時、君は何も出来ない自分をずっと攻めていた。
その頃からずっと医者になると言っていた。
でも俺は君がいるだけでいいのに。
「で、手術はいつなの?」
さっきまで笑顔だった君は急に悲しそうに俯いた。
「あし……た」
「明日?!」
明日……随分と急だな。
きっとずっと前から決まっていたことだったんだろうけど俺に気を使ってくれていたんだろう。彼女らしいが少し悲しかった。もっと早く知りたかった。
「がんばれ。ほのかなら大丈夫だよ。」
「ありがとう」
いつものように笑っているけど。
ほんとはとても怖いはずなのに。
俺は君に何も出来ないのか…?
「精市…悲しい顔しないで?お別れじゃないんだから、笑って?」
「ほのか……」
精一杯の笑顔を見せたつもりだけど、俺は笑えていたのかな。
次の日。君の手術の日
朝早くから病院に駆けつけた。
「ほのか!」
「精市!来てくれたんだね」
いつもの笑顔で俺を迎えてくれた。
俺も精一杯の笑顔で返す。
「今からなのかい?」
「そうなの。手術前に精市に会えてよかったよ。」
泣きそうになった。
もう君に二度と会えないような気がした。今すぐに君を抱きとめて行かないでと言いたかった。