第4章 彼女への感情
あなた目線
「ね〜せいいち〜」
私の大好きな彼の名前。わざと甘えた声で擦り寄ればあからさまに鬱陶しそうな態度をとる。
「なに。」
素っ気ない態度にため息付きで返事した彼。流石に傷つく。
「ねぇ!最近のせいいち変だよ?私と一緒にいてもずーっと上の空!
何かあった?」
ただ、ただ心配だったから素直に聞いてみたら、すこしだけ困った顔をしたあとぎこちない笑顔で何もないよと微笑んだ精市。
でも私はその笑顔を見ないふりして精市の腕に絡みつく。
精市の言葉を疑いたくなかった信じたかったから、あのまま精市の顔を見ていたらゆらぎそうでこわかった。
最近精市はおかしい、今までは私が名前を呼べば優しい笑顔で呼び返してくれた。私が寂しそうにしていれば大丈夫だよと抱きしめてくれた。
話しかければ愛おしそうに私を見て話を聞いてくれた。
でも最近は違う。まるで私の存在などいらないみたいに。私を見ていない。学校で会っても避けられるようになった。なぜ?私、精市に嫌われちゃったのかな。
ある日、学校の廊下を歩いていたら精市がテニス部の子と話しているのを見かけた。向こうはまだ私に気づいていないみたいだ。
「これは話しかけるしかない。」
精市がテニス部の子と話を終え、別れるタイミングで彼の目線の中に入った。精市は逃げようとしてたけどそのまま腕を掴んで人気のないところまで連れていった。
「せいいち、最近私のこと避けてない?」
精市の眉がうごいたのを私は見逃さなかった。
「ねぇ、せいいち私何かした?」
だんだんと体が熱くなってくる。
精市は何も答えない。
不安で不安で仕方がなかった。
「せいいち、お願い答えてよ!」
もう我慢の限界だった。気がついたころには、もう目から涙が溢れていた。視界は涙のせいでぼんやりしていて精市の表情がみえない。
「せいいち…うっ…ひっく…」
「ほのか」
今までに聞いたことのないくらい優しい声で名前を呼ばれ驚いた。
涙を拭い精市の顔を見つめれば
優しい笑顔で私の顔を見つめる精市がいた。