第5章 闇夜の調べ
「ええ。王宮も近いですからね。劇場もありますし、明日辺りならサロンを開く屋敷もあるでしょうから、興味があれば手配致しましょう。」
興味、というより……何があるのか分からない、というのが現状である。劇場って、演劇だとか……コンサート?とか?確かに気にはなるけれども、私の知っている内容のものはあるのだろうか。サロンは、聞いたことない。ヘアメイク?いや、そんなわけないよな。何する場所なんだろう。
それに、そういった場所は絶対にドレスコードとかあるやつでは??きちんとしたドレスは全部置いてきてしまっているし、メイドさんも連れてきていない。
はて、困ったぞ。と考えていると、先程のルシスさんの言葉に気になる単語があった事に気がつく。
「えっと、王宮って、お城ですよね…?もし行けるのであれば、近くに行くだけでも良いので行ってみたいです。」
だって、ハイデスさんが居る場所だ。
ずっとどんな場所なのか、気になっていた。
「おや、城へ?なるほど……良いでしょう。あまり奥へは連れていけませんが、庭園を軽く回るくらいなら出来るでしょう。」
「ほんとですか?ありがとうございます。」
お城に行けると聞くだけで、少しだけ嬉しくなった。
しかし、今日はそこまで時間に余裕もないので、お城に向かうのは明日ということになった。そんな中気が付けば普通に旅行気分で楽しんでしまっている自分がいて、何だか私だけ申し訳ないなと思いながらも、今はルシスさんの厚意に甘えることにした。
もう少しで到着するということで見えてきたのは石造りの、少し白っぽい建物が多い地域だった。少し神殿みたいな、教会みたいな、そんな建物が多く立ち並ぶ通りを馬車が走っていく。不思議と、人通りはあまり無く、少し寂しい街だなと思ってしまった。
そんな私の様子を察してか、振り向いた私にルシスさんがそっと笑いかけた。
「寂しいところでしょう?すみませんね、ここ周辺はあまり人気がなく、こういった雰囲気なのですよ。」
「いえ、静かで、でも何だか不思議な雰囲気……私、ここ好きです。」