第4章 3 夢か現か幻か
こんなにも身勝手な行為だというのに、私の身は幸福に満ちていた。
ゆっくりと上体を起こし、彼女を見下ろす。涙で潤んだ瞳が、私を正確に写す前に再び口付ける。
我ながら呆れる程の量の出た白濁としたそれを見ると、指で掬って、彼女を見た。
「すまない、アンリ……私はもう、狂っているんだろうな。」
ぼんやりと私を見る彼女をよそに、その手に取った私のものを、彼女の割れ目に擦り付けた。
「あっゃ、え、?」
違和感を感じたのか、戸惑った様子の彼女に、私はまた同じように己のそれを彼女に擦り付け、そして中へと指を差し入れた。
「やっ、なに、してっ…!!」
行為の途中から、段々と意識がハッキリしてきていたのだろう。
私の行動の意味を理解して焦る彼女に、そのまま中に行き渡らせる様に指をかき回した。
少しでも、私の魔力が彼女の中に残るだろうか?
でも、一向にその気配を感じない事実に、私はまた酷い落胆とあの化け物への嫉妬でギシリと音が鳴るほど奥歯を噛み締めた。
「あ、っあ、なんで、ハイデスさん、ひどい、そんな……、!」
しかし、想像以上の動揺を見せるアンリに、少し困惑する。
「、私の魔力を入れられるのが、そんなに嫌かい……?」
ああ、現実はあまりにも残酷だ。私が思っていた以上に、それこそ心の臓に鋭い刃を突き刺されたかのような。
私が最も恐れていたことだ。
嫌われても、拒絶されても仕方がないと思いながら、その現実から目を背けた報いを、こんなにも早く突きつけられるだなんて。
思わず震える声で問うた、目を逸らしたくなる問いに、彼女から返ってきたものは、あまりにも拍子抜けするものであった。
「だって、そんなことしたら、あ…あかちゃん、出来ちゃうかもしれないのに…、!」
「……、え?」
泣きそうな、震える声でそう言う彼女は、きっと本気でそう思っての言葉なのだろう。
でも、そんな彼女があまりにも可愛らしくて、思わず漏れた、気の抜けた声と共に、この瞬間に感じた胸を焦がすほどの想いは何だったのかという気持ちで、笑いを押し殺すことが出来なくなった。
「ハハ、そ、そうか……っく、子供か、そうか…。」
口元を押さえて笑う私に、信じられないと言った様子のアンリは、私が初めて見た怒りの表情だったかもしれない。