第17章 喧嘩別れ
もともと付き合ってもいない。ただ何となく一緒にいるだけ。
そんな中途半端な位置でダンテの隣にいて苦しくないはずはなかったが、もうこれで終わりだ。
は荷物を一番大きな鞄に詰める。
最低限のものだけ持てばいい。なるべく片付ける気がなくなるくらい物を残して、ダンテが私を思い出せばいい。
大きな鞄に小さな荷物。
は部屋を出る。
「どこ行くんだよ」
「どこでもいいでしょう。今日からあんたは他人よ」
「今日の夕飯どうすんだ」
「知らないそんなの。トマトでもかじれば」
荷物を担いで出口に向かう。
外は晴れていてを迎えているように見えた。
本当にさよなら。
楽しい日をありがとう。
いつも笑ってくれてありがとう。
喧嘩してくれてありがとう。
馬鹿馬鹿しい別れをありがとう。
扉に手をかけ開ける。
後ろからダンテの声。
「冗談じゃねえよ。俺お前がいないと生きていけねぇんだけど」
何をそんな弱気な事を。
そう思ったのに身体は一瞬ぴくりと止まって。
それが終わりの合図だった。
「ずっとここにいろよ」
ドアを開けたまま立ち止まる。
を押し返すように向かい風が吹いた。
20070811