第17章 喧嘩別れ
「だからあれは事故だっていってんだろ?不可抗力だ!」
「事故事故ってどこにそんな都合のいい事故があんのよ!」
ダンテと些細な喧嘩をした。
それは言ってみればいつもの事で、結局はどちらかが折れて仲直りをするのだが。
喧嘩中の熱が上がった頭ではそんな後の事に意味はなくて。
今日という今日は。
堪忍袋の尾が切れた。
「……っ!もういい!」
バァンと目の前のテーブルを叩き、涙目でダンテを睨みつける。
ダンテは別に驚きもせず何でもないような表情。
今に何を言われたってそれはこの時だけで、時間が経てば冷えるとわかりきった顔。
それが妙に癪に障った。
「おいおいテーブル壊すなよ」
「うるさい!もう私この家出る!」
どんな反応をするかと見れば、ダンテは眉を少し上げただけだった。
子供のように、家を飛び出してもちょっとすれば戻ると思っているのだろう。
わかった瞬間、カッと頭に血が昇った。
昇りすぎて冷えた。
「……さよなら」
冷徹。こんな声出せるんだ。
今はどうでもよかった。ダンテを見たくなかった。
何も言わず引き留めもしないダンテの前を、ゆっくりと離れた。