第16章 お揃い
うららかな春の陽気の中、洋服を買うために出掛けた。
帰ろうと出口に足を向けた彼女の目にふと、一組のピアスが目に止まった。
「すごい…」
は思わずそれに魅入る。
銀色の丸い珠に、見事な紅の石が埋め込まれたピアスがあった。
紅の石は逆さまの雫型。その雫の丸い部分にかかるように、銀色の円。
えぐられた銀色はまるで三日月のようで、その存在感には息を飲む。
可愛いさと格好よさがバランスよく混じったデザイン。
いつの間にか、ダンテがつけたら似合うだろうなと考える自分がいて。
それに私も、これ欲しいし。
「………」
―――おそろい?
思って、妙にドキドキした。
そうだ。考えてみたら、ダンテと私はお揃いのものが一つもない。
どうして思い付かなかったんだろう。
そうして気付いたら、同じものをもう一つ取っていて。
同じ色。同じデザイン。
心臓が跳ねる。ダンテと同じのを、付けられる。
嬉しい。
は迷わずカウンターにそれを持って行った。
ダンテはどんな顔をするだろう。私がダンテにプレゼントをあげるのも初めてだ。
喜ぶかな。子供みたいな笑顔で笑って、叫んで、抱きついて…付けたら、また嬉しそうに笑って。
自然と頬が緩む。
早くその笑顔が見たい。
包装も頼んで綺麗に包んでもらうと、は軽い足取りで帰路についた。
知らずのうちに早くなる歩調。
このピアスをつけたダンテが、早く見たくて仕方なかった。