第12章 金色の海と太陽に
「泣くなよ…」
ぽろぽろと涙をこぼすを、ダンテは苦笑しながら見つめた。
「ご…っごめ… とまんな…」
「泣いてる顔も可愛いぜ」
「! …ばかぁ!」
笑いながらダンテはを抱きしめる。
泣き止んで欲しいのに、の涙はこぼれるばかり。
どうしたら止められるか考えても、わからなかった。
だから。
せめて流れた涙を受け止めよう。
再びの顔に唇を寄せて瞼に触れる。
涙がダンテの唇に触れて、それがとても温かくて。
海の味がした。
不意に輝く空。
海の彼方、遥か向こうから金色の光。
朝陽が顔を覗かせていた。
「さよならだ」
過去の自分に。
そして新しい誓いを。
金色の太陽と全ての源の海に。
「私も…」
が朝陽を見ながら言う。
その横顔は光に縁取られていて、ダンテは目を細めた。
「私もさよならするね」
そう言ってダンテを振り向いたの顔には、ダンテの望んでいた笑顔。
微笑む瞳は涙で光り、その神秘さと美しさにダンテは息をのんだ。
まるで女神。
俺だけの女神だ。
はくるりと身体の向きを変えると、最初にしていたようにダンテの中におさまり、身体を預けた。
時折鼻をすする音。しかしもう泣いてはいない。
「…心臓止まったよ」
泣いている事が急に恥ずかしくなったようで、拗ねたように言う。
「だから悪かったって。最初に言ってもつまんねえだろ?」
「さよならなんて言われて、死んじゃいそうだった」
「ごめんな」
「……でも…」
海が光り輝いている。
今の私の気持ちのように。
「愛してるって言われて、死んじゃいそうなくらい嬉しくて幸せだった」
「…そうか」
この朝陽を一生忘れない。
決意と誓いの朝陽。
二人は記憶に刻みつけるようにじっと空を見つめていた。
空はやがてダンテの瞳と同じ色に変わり、突き刺すように冷えた空気は柔らかく温度を得る。
2007/01/02