第11章 世界に二人
そうしているうち怒りは徐々におさまり、ダンテは唇を離すと言った。
「もう男としゃべんな」
「…は…っ な 何で…」
の息はさっきよりも更に乱れていて、それがダンテに優越感をもたらす。
「の笑ってる顔が俺以外に向けられてんのが我慢ならねえんだよ」
「へ…」
レイの事だろうか。
は瞬く。
――あぁ そうか。
唐突に納得した。
だから彼は、あんなに泣きそうな顔をしていたのか。
彼自身は気づいていないだろうけど。
それで怒ってるつもり?
不安で押し潰されそうな顔して。
「ダンテ…」
「は俺だけ見てろ」
命令。
しかしそれは懇願。
ダンテの中で願いと嫉妬と我が侭と独占欲が入り乱れ、彼自身でもよくわからなくなってきていた。
「…レイは悪い人じゃないよ?」
一応言ってみる。
ダンテは顔をしかめた。
「いい悪いは関係ねえ」
案の定の答え。
は微笑む。
「笑い事じゃねえぞ」
「ごめんごめん。わかってる」
「お前と話す男は、俺だけでいい」
「うん」
二人、自然と顔を寄せて唇を重ねる。がダンテに足を絡める。
ダンテはそれに、満足そうに微笑んだ。
「ダンテも…他の女の人、見ないでね」
小さな声。
空気に消え入るように。
恥ずかしそうには言った。
それを聞いて、自分の唇を舐めながらダンテは目を見張り、笑った。
「何言ってんだよ。俺にとって女は、世界に一人だけだぜ」
―――安心しろ。
とっくにお前しか見えてねえよ。
が微笑む。
ダンテにしか向けられない、世界でひとつだけの笑顔。
大切で愛しいもの。
「私も、男の人はダンテだけだよ」
そう言ったの唇に、ダンテの唇が再び重なった。
2006/12/11