第9章 散歩
「ここだ」
着いた先は、スラムから大分離れた人気のない空き地だった。
人の手がほとんど加えられていないために草がのび放題にのび、風にそよいでいる。
は自然が好きだった。
だから、この場所を見つけた時は絶対に連れて来ようと思っていた。
「わぁ…」
案の定、の顔が輝く。するっと繋いだ手を離すと、彼女は放たれたように走り出した。
紅葉に色付く葉。それを眺め。
遠くの淀んだスラム街を見。
落ち葉を踏み。
さくさくと鳴る音がの笑顔を誘う。
はしゃぐを、俺は遠くから見ていた。
まるで子供のように走り回り、ぱっとしゃがんだと思うと落ち葉を拾う。
ぱたぱたとこっちに駆けて来たかと思うと、嬉しそうな笑顔とともに拾った落ち葉を差し出してきた。
「見て!きれいな色!」
「だな」
俺は落ち葉を受け取ると、指先でくるくる回してみる。
それににこっと微笑むと、はまたぱたぱたと走って行ってしまった。
――なんなんだお前の可愛さは…!!
の背中を見つめながら、にやけた口に手を当てる。
きれいなのはお前だと、可愛いのはお前だと、口を突いて出そうになったがとどまった。
――連れてきてよかったぜ…
心底思う。
しばらくして、満足したのかは俺のもとに戻ってきた。
「気に入ったか?」
「すっごく!ありがとうダンテ!」
僅かに白い息を吐きながら、は笑う。
嬉しい。
俺はそれに微笑むと、その場に腰を下ろした。
も真似て座る。
「……っくしゅ!」
「お」
くしゃみに瞬いた俺はの手をとってみた。
「冷てーじゃねえか!」
見ると、の鼻は寒さで赤くなっていた。
頬に触れても、冷たい。
「んー…ちょっと寒い…かな!」
「ちょっとじゃねえだろ。はしゃぎすぎだお前は」
「へへ」