第54章 一度入ったら逃げられない (逆ハーダンテ落)
しかし、頭上で交わされる言い争いを無理矢理意識の外に出そうとしていた私は、ぺらりとページをめくった頃に再び巻き込まれる。
「なあ!俺の方が好きだよな!」
「だから貴様は幼稚だというのだ。言葉を聞かないと信じられないのか」
「アンタは黙ってろよ。、こないだ俺に好きだって言ってくれたろ」
「それはダンテの歌う声が好きだって…」
「ほらみろビンゴ!」
指を鳴らしたダンテは勝ち誇った笑顔で私の腕を取る。
「行くぞ」
「えっ」
「待て貴様。をどこに連れていくつもりだ」
バージルが鋭く止めると、ダンテはふっと笑った。
「んな事聞くなんざ野暮ってもんだぜ。好き合ってる男と女がする事っつったら一つだろ」
「誰が誰と好き合ってるだと…」
ゆらりと立ち上る青いオーラ。バージルの周りをたちまち幻影剣が囲い、ダンテに狙いを定める。
わざとだ。絶対わざと挑発した。超楽しそうな笑顔を浮かべているダンテを見て、私は確信した。
「男の嫉妬は醜いぜ」
歌うように言いながらダンテは私の手を引っ張って2階に上がり、自分の部屋へ向かう。
「ちょっとダンテ…私やる事が」
「後回し後回し」
「でも」
部屋のドアがぱっと開かれ、中に放り込まれる。
私がよろけた体勢を立て直して慌てて振り返る間に、ダンテはさっさとドアを閉めて鍵をかけた。
私を見て、笑む。
「ようこそ、俺の部屋へ」
(一度入ったら逃がさない)
2009/06/26