第46章 試練
クリスマスも近い寒空の下、私とダンテは買い物を終えててくてくと帰路についていた。
夜だというのに辺りはそれを感じさせない程明るい。
ハロウィンが終わった瞬間木々を彩るイルミネーション。クリスマスケーキの予約を催促するチラシの隣に新年を予感させる貼紙。クリスマスが終われば華やかさはさっさと取り除かれ、年末へ向けての準備でまたバタバタするのだろう。
全くもって忙しい。ぼんやりクリスマス仕様にされたディスプレイを見ながら、私は思った。
「ねえ…今年のケーキ何がいい?」
ふと思いついて尋ねる。
「ケーキか…去年は何だっけ。チョコ?」
「うん。普通のホールのやつ。ブッシュ・ド・ノエルとかも良いよね。可愛いし…」
「それよりもっと美味いケーキ知ってるぜ俺」
「どの店?近く?」
「んにゃ。いや、近いか…」
「どっち。ていうかどんなケーキ」
「いやそれが見た目もすんげえかわいくて美味そうでさ。世界にひとつしかねーから見つけるのに苦労したんだけどそこは俺の愛で…」
「ちょい待ち」
突然嬉々として話し始めたダンテに私はふと何かが引っ掛かって声を上げた。
視線を合わせると意味ありげに微笑む彼を見て、予感が確信になる。
「そのケーキって…」
「ん?」
「もしかして…」
「あ。わかった?」
まるで子供のように無邪気にダンテは笑った。
反対に私は。
「…たぶん」
固まりつつある表情。