第1章 HELLOWEEN NIGHT
部屋をそっと出て、ダンテの部屋に向かう。
少し気恥ずかしかったが、期待とわくわくする気持ちの方が大きかった。
そっと気付かれないように歩いてダンテの部屋のドアの前に立つと、中からガタガタ物音がして、彼がいるのだと知らせてくれる。
一度、やや深く深呼吸。
それから。
コンコン
ドアを軽くノックすると、ガタガタとしていた物音がピタッとやんだ。
―――ゴツッ… ゴツ
かわりに、重たく鈍いブーツの音。
段々と近づくそれに、の心拍数も上がる。
ぱたぱたと服をはたいて軽く髪に指を通し整えると、それを待ったかのようにドアが開いた。
「何だ?何か用…」
ちょこんとドアの前に立つの格好を見て、ダンテの言葉が途中で止まる。その隙には、ぱっと片手を差し出してお決まりのあの言葉を言った。
「トリックオアトリート!」
「………」
ダンテはぽかんとして数回瞬くと、やがてようやく目の前の状況を理解したらしく、ぷっと吹き出した。
「おいおい…随分かわいらしい魔女だな」
「ハロウィンなんですよ!」
「ハロウィン?」
またもや瞬くダンテ。
「あれ 知らないですか?魔女とかお化けの格好した子供達が、お菓子くれないといたずらするぞ!って言って家を訪ね回るんです」
そう言われ、ダンテは考えるように宙を見る。顔を傾け銀髪が滑り、訝しげな表情。
もしかしてダンテはこんな子供地味たものに興味がなかっただろうか。餓鬼くさいと思われるかな、と考えて、急に恥ずかしくなった。