第39章 魔法の呪文 (獣化)
不味い。
何だか知らんが滅茶苦茶不味い。そして臭ぇ。
トマトってこんな味だったか? こんなに不味かったか?
口に残るトマトの味をけっけっと噎せながら懸命に吐き出しつつ、信じられない気持ちでトマトを見る。
トマトにしか見えない。まして腐っているはずもない。
なのになぜこれほど不味い。俺はこれを本当に美味しいと感じていたのか?
草臭いし水っぽいし味もないし噛みごたえもない。
それどころか吐き気がしてけほけほと咳き込む始末。
「猫って肉食だもんねー。トマトは駄目かもね」
頭上から他人事のように彼女は言う。
「あ そうそう。それと、何か戻し方忘れちゃったからしばらくそのままで宜しく。ごめんねー」
他人事のように。
……………あ?
がばりとダンテは身を起こした。
そんなのないだろ! と叫ぼうとして…
「………あれ」
既に太陽が昇りつめた部屋が目に入る。
布団を掴む自分の手は人間のもの。ぺたぺたと上半身を触っても、ふわふわの毛なんかどこにも生えていない。
「…夢オチかよ」
ダンテは力が抜けて、枕にばすんと倒れ込んだ。
20080224