第39章 魔法の呪文 (獣化)
日常茶飯事の口喧嘩。言い負かされた方の負け。
どちらかから始まりどちらかから終わる。1ヶ月続く時もあれば1時間で終わる時もある。
しかし、「なるわけねぇだろ」と言おうとした俺の口と舌は、動かなかった。
ざわざわと身体が疼く。異変を訴える身体に顔を上げた。
驚いて、その動かない身体のまま彼女を凝視する。
この感覚は身に覚えがあった。最近滅多にやられないから忘れていたが、この気持ちの悪い気味の悪い力。
まとわりつく何か。
まさかまさかまさかまさか。
マジかよおい冗談かましてんじゃねぇぞ。
気持ちと裏腹に確信が強まる中、魔女である彼女がとどめの微笑みを見せた。
皮膚がむず痒い。身長が縮まる感じがする。
俺はぎゅっと目を閉じて、逃れられない真実をせめて目に入れないようにとかたくかたく視界を閉ざした。
変化変動は10秒程度。もうこうなると何を言っても始まらない。
両足で立っていたはずの身体はいつの間にか四つん這い。
着ていた服の感覚もなければ、それどころか手の感覚も違う。
それもそのはず。
だって今自分は。