第37章 真夜中の客 (初代ダンテ)
静かな静かな静かな夜。
一日は終わりを迎えようとし、そろそろ日付が変わる頃。
シャワーを浴びていたダンテはバスタオルを頭から被せると、真っ赤なボトムパンツに足を通し、上半身を曝け出したままシャワールームから出てきた。
これは昔からの、そう、言うなれば癖のようなものだ。
温まった身体の熱を逃がしたくて、洗ったばかりの身体にたとえ新品でも服を触れさせたくなくて、服を着て動きを制限されたくなくて。
昔からの癖。
こんな時間になると、間違い電話か切迫詰まった事でない限り電話のベルは鳴らない。
そろそろ部屋に戻るか、と思い、デスクに置いてある銃と酒の瓶を手に取る。
その時。
ドアの向こうに気配。
ちらりとダンテはドアを見遣る。
10秒待って入って来なかったら部屋に行く、と決め、デスクに軽く腰掛けて外の気配をじっと伺った。
外の気配は、7秒間だけ動かなかった。
何かを決意するような間があって、ダンテはそれだけで白けた気持ちになる。
ここに入る事だけで迷ってるようじゃ、大した仕事じゃねぇな。
望んでいる悪魔退治の仕事なら、迷う暇も余裕もなくドアを開けるだろうから。
そして、9秒目で。
ドアが開いた。
ドアを開けてこちらを見、少しだけ緊張したように拳を握ったのは、意外にも妥当にも女だった。
自分よりも幾分は年下に見える。20代前半てとこか。
身なりは至って普通で、貧困者でもなく、かといって富豪でもない。
ただ強く何かを望んでいる眼光が、一番に目についた。