第22章 春眠
温かい春の日。
本を読んでいたは、ページをめくりながらまぶたが重たくなるのを感じていた。
分厚い本も半分ほど読み進んだ。
丁度話が一区切りついたところで、ぱたりと閉じる。
「……くぁ…」
思わずあくびが出る。
ぽかぽかと陽当たりのいいソファは居眠りをするには絶好の場所。
閉じた本を脇に置くと、はころんと横になった。
ダンテは仕事に行っている。そろそろ戻って来る頃だけど…どうしよう。
やっと疲れて帰って来たのに、私が寝てたら駄目だろうな、と。
そう思うが、瞬きをする度に瞳は細まり。
目の前でうねる自分の髪を気まぐれにいじってみるも、その手も次第にゆっくりと動きが鈍くなって。
――ちょっとだけ…ちょっとだけ、目閉じてよう。
そう思って、耐えきれずに目を閉じたのが最後だった。
はそのまま眠ってしまう。
――あー…つっかれた。
ダンテは、少しだけ土埃のついた赤いコートを、手で軽く払った。
怪我はしていないが、体力がかなり擦り減っている。
重たい身体を気怠く動かして、足を引き摺るように歩いていく。
帰ったらが待っているだろう。
「お帰りなさい」と、微笑んで迎えてくれる事だろう。
それを思うだけで、ダンテの頬は緩んだ。
しかし。
事務所に帰ったダンテは、「ただいま」と言おうとした口を開いたまま目を見張った。
来客用の赤いソファの上に、小さく丸まるようにしてが横たわっている。
その身体は規則正しく上下していて、寝ていると一目でわかった。
傍らには本がある。
読んでいるうちに眠ってしまったのだろう。
ダンテはふっと笑うと、ドアを静かに閉めて、なるべく足音を立てないようにに近づいた。