第20章 勘違い
ダンテは重たい仕事をようやく終え、ゆっくりと引き摺るような足取りで帰路についていた。
疲弊し動かしたくなくなる足。身体全体が気だるく、背中の剣がやたら重く感じる。
まったく…うじゃうじゃゴミみたいにいやがるからあちこち擦り剥いちまったじゃねぇかよ。にどやされる。
「………」
でもまあ、それもいいかと。見えてきた事務所を眺めながら思った。
あまり大きな怪我はしていない。どやされる事はあっても叱られる事はないだろう。
事務所の前に立つ。
今は夜だ。が寝ているかいないか、といった微妙な時間。
まあバージルは起きているだろうが。
もし寝ていた時のために、起こさないようゆっくりとダンテはドアを開けた。
家に入って、見渡しながらドアを閉める。
リビングも上も静かだ。どうやらは眠ったらしい。
ダンテが帰った時の為に部屋の明かりだけがぼんやりついていて、テーブルの上には彼の分の夕食。
それを見ると一気にお腹が空いてきて、ダンテは料理にかぶせてあるラップを取り去った。
その時。
「やっ…!」
声に顔を上げる。
すぐにわかった。の声が2階から聴こえる。
何だよと思って耳を澄ますと。
「ぅ…んっ痛!痛いっ馬鹿!もっとゆっくりでい…ぁあっ」
「………」
軋む音との声。
呆然。
なんだ、この声。聞いた事のないの声。
突拍子もない事に頭の中は真っ白で。
脳裏に浮かんだ想像に、心が理解を受け付けない。
2階を見上げながらダンテは固まっていた。