第1章 絶体絶命
バタンと閉まったドアを見つめ、はふうっとため息をついて肩の力を抜いた。
───あんな無表情見てるとこっちまで無表情になって、息詰まるなぁ……。
怒ってはいないと分かっていても不安になる。
でも、きっといい人だ。と思う。
そうでなければ、見捨てるような事まで言ったのにわざわざ助けたりなんかしないだろう。
もしかしたらそれは優しさではないのかもしれなかったが、はそれでもよかった。
生きているだけでよかった。
はバージルが置いていった本を見る。
───難しそうな本。頭いいのかな…
何の気なしに開いてみると、読む気力も起きない程字ばかりの本でげんなりしてした。
こういう難しいのは苦手だ。
手持ち無沙汰にパラパラとめくっていると再びドアが開き、盆を持ったバージルが入って来た。
お\盆に乗っているお皿から、湯気がゆらゆらのぼっている。
中には食べやすい粥。
「……ありがと」
気恥ずかしさを覚えながら皿を受け取る。
バージルは再び椅子に座った。
「深い傷が多い。腕と足と、見える所の怪我はすべて治療した」
「………うん」
報告をするように話すバージルの声を聞きながら、お粥をすする。温かくておいしい。
しかしもっと続くのかと思われたバージルの話はそれだけで、後は黙っての様子を見ていた。
───た 食べづらい…
放っておかれるのよりはいいが、治療もしてもらった手前恥ずかしい。
ものすごく。
ていうか何でこっち見るの。ガン見よガン見。
せめてさりげなく見てほし………あ、そっか。
「美味しいよ?」
「料理の出来など聞いていない」
「…………」
撃沈。
ならこっち見ないでよと叫びたい。