第5章 招かれざる客
「話を聞かせてもらおうか」
「…うん」
何食わぬ顔でバージルはテーブルに腰をおろした。
しかし内心沈む気持ちが押さえられない。
時間が泥のようにまとわりつく。進んでいく。進んでいく。
止められない。
誰にも。
も、暗い表情。
バージルには彼女の表情の理由がわからなかった。
なぜそんな顔をする?
主とやらに会ったからか?この家を出ていかなければならないからか?
苛立つ。
何に対して?
決まっている。
あの男だ。
そんな顔をするくらいならあの男の元になど行かなければいいのに、と思うが、そうもいかないらしい。全く女はわからない。
しかし、もしも。
もしもがあの男について行くのを嫌がったなら。
一度でも嫌がったなら、その時は、俺が。
がテーブルの椅子に座った。
割れた皿も散った料理もそのままで。
冷めた料理は、食べられる事はない。
話を頭の中でまとめているのだろうか。はじっとテーブルを見つめたまま黙っていた。
時間が進む。
まるで二人を引き離すかのように。
そして確かに、二人の距離は離れていた。
やがてがきゅっと口を結び、手を祈るように組み。
ゆっくりと口を開いた。