第3章 目覚め
私はよごれた人だから。
あまりにもよごれてまみれてどろどろに浸かってしまった過去があるから。
せめて気持ちは汚したくない。
汚れの中に綺麗を混ぜて
まだ私は大丈夫だと、正常だと言い張りたい。
ヒュウイ…
思い出すあの余裕すぎる笑み。
漆黒に濡れて闇から出たかのような黒い服。
それと対称的な薄いグレーの髪。
それに混じる紫。
私のあるじ。
暗くよみがえる記憶。
あの時の私は幸せだっただろうかと考えて、考えた自分に嘲笑。
もし私が今のように怪我をしたとして、彼はバージルのように手当てをしてくれただろうか。
こんな風に丁寧に治療をしてくれただろうか。
「…………」
考えても意味はないのはわかっている。
今は絶望的に意味はないが、かつてそれが意味を持ちすぎるほど持っていた事も。
ただ、考えてみただけで。
固く閉じたふたが柔らかく開く。