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【DMC】BLUE

第13章 ふたつ



足音が規則正しく響いている。
やや引きずって歩くような、気だるく重たいブーツの音。それ以外は無音。
木々のざわめきすら風のうなり声すら鳥のさえずりすら聴こえない。
不自然な空間。

ずっとずっと続く塀。ヒュウイは延々続くそれを見つめながら歩いていた。
向かうはルース家。
ヒュウイの実家。

───ルースなんて家名、捨てたけどな。

ヒュウイ・ルースはここにはいない。
いるのはヒュウイ。
そして。

───…やめだ。

考える事を放棄。考えれば終わりな気がする。
終わるのは誰だ。自分であって自分じゃない自分。
それは結局自分なのかと考えてみるも答えは出ない気がした。

それにしてもこの塀はいつまで続くのか。相変わらず馬鹿でかい家だ。
先程からゆうに500メートルは続くこの塀は、ルース家を取り囲んでいるものだった。
高い壁。向こう側は何一つ見えない。
なのにヒュウイには、向こう側がどのあたりなのか見当がついていた。

この辺りは風呂場。先を行くと俺の部屋だったところ。
その向こう側は。
向こう側は。
父の部屋。

あんたは上手くやってたつもりだったんだろうが、残念だったな。
俺は全てを知ってる。知っててここまで来た。

きっと俺の姿を見たら驚くんだろうな。
密かにほくそ笑み、ようやく見えてきた玄関の扉を見遣る。
よかった。これ以上塀が続いてたら飛び越えるとこだったぜ。


門の頑丈なまでのセキュリティ。
金持ち自慢と臆病者の証。

来訪者は事前の予約が必然で、声帯と網膜と指紋の認証が必要になる。
予約のない者は誰一人としてルース家に入る事はできず、もしもこれを壊せば刀と銃を携えた警備員が数十人駆けつけてくるのだ。

警備員はもちろん腕の立つ者ばかりで、捕まれば逃げられない。

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