第12章 舞踏
青い人に、まだ何も言っていないのに。
会ってもいないのに。
探しているのに。
男達の会話。
「殺したらまずい」「でも手配書には生死は問わないと明記」「使うだけ使え」
…手配書?
何の事?
聞いたつもりだったのに、声すら出なかった。
疲れた。は目を閉じる。
呼吸すら億劫だ。こんなに疲れたのは初めて。
男達がざわめいている。私が死んだと思った?
そのまま勘違いしててよ。そしてそのまま放っておいて。
人の手にかかって死ぬなんて御免だから。
でもこの状況じゃそんな事言ってられないな。
くるくる。
くるくる。
思考が渦巻く。
雑念は思念に。
思念は奔流に。
奔流は激情に。
激情は霧散して。
頭の中は思考を排除しても真っ青で。
視界は目を閉じても真っ赤で。
反対色。
紅い場所に、青いコートが近づいていた。