第2章 侵入者
バージルがいなくなって気付く事。
彼は、さりげない優しさをたくさんくれる。
話したり、聞いたり。
愚痴をこぼすと逆にけなしてきたり、バージルの読んでる本について聞くと延々話したり。
口調はそっけなくて、つい私も強く言い返しちゃうけど。
バージルは優しかった。
バージルが買い物に出掛けてしまった。
はベッドに横たわって天井を見上げる。
時計の音がやけに大きい。
外の喧騒もよく聞こえる。
水の流れる音がかすかにしていて、川なんて近くにあるのだろうかと考えたりして。
木の葉の擦れる音が心地よく耳に入ってきて。
ゆったりとした時間はずいぶん久しぶりな気がする。
しかし今は、その静けさが妙に落ち着かない。
いると腹が立つが、いないと途端に寂しくなって。
───あんなのでも、いないと何か…なぁ。
暇潰しでさえもいなくなってしまった今、する事が何もなくては困った。
がバージルの所に来て3日目。
初めは身体を動かすだけで痛みが走った身体ももう起こせるまでになり、体力も随分回復した。
ただ怪我自体はまだ完治しておらず、動けるのに動けない、という状態が続いている。
体力は有り余っているのに何もできない。
せめて筋トレでもしたかったが、それをバージルに言ったらこっぴどく怒られた。
こんなに動かないでいると身体がなまってしまいそうだ。
それがすごく心配で、軽くでも何とか運動したいと思うのだが。
バージルが許してくれない。
無視して動けば一日中見張る事になるぞ、と脅すように言われたので、言いつけを破るわけにもいかなくて。