第13章 特別編「偏愛…」
「ところで智翔はどうなった…?」
僕の記憶が確かなら、智翔はあの時…
「なあ二宮、智翔に会わせてくれないか?」
痛みを堪えて身体を起こし、僕は二宮に問いかけた。
ところが二宮は首をゆるりと振って、一言だけ…
「智翔は死んだよ…」
それだけを言って僕から視線を逸らした。
「嘘だ…」
「嘘じゃない、俺が異変を感じて駆け付けた時にはもう…」
嘘だ…。
二宮は嘘をついている。
僕は見たんだ。
あの時、意識を手放す瞬間、智翔に近付いて来た人影を見たんだ。
そして智翔を抱いて…、それから…
「じゃ、じゃあ…、智翔の遺体は…」
「無いよ…」
「骨は…」
僕がどれくらいの間眠っていたのかは分からないが、その間に智翔の遺体が荼毘にふされたのならば、遺骨くらいは残っている筈だ。
なのに二宮は首を横に振り、
「死んだんだ…、智翔は死んだ。だから…」
再び唇をきつく噛んだ。
「どういうこと…だ。遺体も無ければ、遺骨も残ってないなんて…」
それじゃあ智翔は…?
分からない…
あの時見た人影を、僕はてっきり二宮だと思っていたが、違った…ということなのか?
「なあ二宮…頼む…、智翔に会わせてくれ…」
お前なら何か知っている筈だ…
僕は必死に訴えた。
その度に二宮は、首を横に降り続けた。
会いたかった…
例え息をしていなくても…
例えその目を開いてくれなくても…
僕は智翔をこの腕に抱き締めたかった。