第13章 特別編「偏愛…」
僕が一番聞きたくなかった言葉…
かつての智子も、今の智翔と同じ言葉を口にしたことがあった。
その度に僕の胸は張り裂けそうに痛み、心の奥底で涙を流した。
「化け物なんて…、そんな悲しいことを言わないでおくれ…」
僕は智翔に言い聞かせるように言って、一度は擦り抜けてしまった智翔の手を再び握った。
「だってそうでしょ? こんな身体…」
ああ…、それ以上はどうか…、どうか言わないでおくれ…
「私はこんな身体、いらない…」
「智翔っ…!」
なんてことをいうんだ、と…
そんなことを口にするんじゃない、と…
頬を叩いてでも諌めてやりたかった。
でもそう出来なかったのは、僕には智翔の気持ちが痛い程分かるから…、だから喉まで出かかった言葉を、まるで石粒でも飲むかのように飲み込んだ。
「ねぇ、お父さんはお母さんの身体を初めて見た時、どう思ったの? 恐ろしくはなかったの?」
「それは…」
確かに、初めて智子の身体を目の当たりにした時、僕はそれまで感じたことの無い程強い衝撃を受けた。
でも恐ろしいと思ったことは、一度だってない。
「驚きはしたさ…。でもそれとは別に神々しさを感じたよ」
現に、あの時の智子は、僕が思い描いていた女神様そのものだったから…