第12章 追葬…
駄目だ…、こんな感情、許される筈がない。
だって智翔は僕と智子の…
「兄さま、どうなさったの?」
「い、いや、なんでもないよ…」
僕は頭をぶるんと振ると、左腕に触れた柔らかな感触に燃えるような身体の火照りを感じながら、僕は漸く足を一歩踏み出した。
「ねぇお父さん、智翔疲れちゃった…。おんぶしてくれる?」
智子の仕草を真似ているんだろうか…、指を唇に宛て、強請るように僕を見上げる。
心做しか潤んだ瞳に不覚にも胸がどきりと跳ね上がる。
「あ、ああ…、かまわないよ。ほら」
僕は智翔に背を向け、その場に跪いた。
「やったー」
智翔が僕の背中に飛び乗る。
「もう、智翔ったら甘えっ子さんね?」
智翔の無邪気な姿に、智子がくすくすと肩を揺らした。
「ふふ、だって智翔お父さんの背中大好きなんですもの」
智翔が笑う度、呼吸をする度、頬を埋めた僕の首筋にかかる甘い吐息と、そしてぴたりと密着した背中に感じる、まだ小さな、でも確かな膨らみが僕を抗えない罪へと堕として行く。
ああ…母様、僕は一体どうしたらいいのですか…
僕は今、父様と同じ罪を犯そうとしている。
僕は足を止め、背後にそびえ立つ墓石をもう一度振り返った。
父様、貴方は死して尚僕達を苦しめるつもりですか?
いや、それは違うな…
僕のこの身体の中には、父様から受け継がれた血が脈々と流れている。
貴方が智子を愛したように、いずれ僕も智翔を…
その時は智子、僕を殺してくれるかい?
兄妹で情交わし、果ては子を成す大罪を犯した上、尚も禁忌を犯そうとする僕を…
智子、どうか君の手で…
愛する君の手で…僕を…
〜完〜