第12章 追葬…
町を離れて数年…
その間にすっかり様変わりしてしまった駅に降り立った僕達は、まず二宮の元を尋ねた。
二宮は突然の来訪に目を丸くしていたが、智子の後ろに隠れるようにしていた智翔を見るなり、その目を柔らかく細めた。
「智翔、この人はお父さんの友人でね、恩人でもあるんだよ?」
「恩人…?」
そう…、二宮がいなかったら僕達は今頃どうなっていたことか…
二宮がいたからこそ、僕達は最悪の決断をせずに済んだんだ。
「そうよ、さあ、ご挨拶なさい?」
智子に背中を押され一歩前に足を踏み出した智翔は、ワンピースの裾を指で摘んで、小さくお辞儀をした。
その姿に、二宮の目尻が更に細くなる。
「やあ、これは参ったな。こんなに小さいのに、もうすっかりレディだ」
二宮が智翔の頭をぽんと撫でると、智翔は途端に頬を膨らませ、
「あら、レディじゃなくてお姫様よ? 女の子はお姫様なのよ、ってお母さんいつも言ってるもの。そうよね、お母さん?」
同意を求めるように智子を見上げた。
「そうよ、女の子はいつだってお姫様よ?」
智子は小さく笑うと、智翔の目線の高さまで膝を折り、ふっくらとした頬を撫でた。
「智翔もお姫様よね?」
「ふふ、そうね。智翔は世界で一番可愛いお姫様だわ」
屈託のない智翔の笑顔に、それまで曇りがちだった智子の表情も、徐々に和らいでいくのを見て、僕は少しだけ胸が軽くなるのを感じた。