第12章 追葬…
智翔が十を迎える頃、僕は懐かしいい人から一通の手紙を受け取った。
差し出し人は学生時代の旧友でもあった二宮だ。
二宮とは、智子と二人、期待と不安を胸に抱いて汽車に乗り込んだあの日以来、一度も会ってはいなかった。
勿論、手紙のやり取りだけは、何度かあったけれど…
「何て書いてあるの?」
夕食の後片付けを済ませた智子が前掛けで濡れた手を拭きながら覗き込んだ。
「ん…、照が亡くなったそうだ…」
「まあ、照が…?」
僕の隣りに寄り添うようにして座った智子の目に涙が浮かぶ。
今にも零れ落ちそうな涙を、僕は指の先でそっと拭うと、小さな肩を抱き寄せた。
「仕方ないよ、もう年だったし…」
それに…
照はあの日…、母様が父様を刺したあの日、母様の命で屋敷に火を放った。
その後、照は母様の後を追おうことも考えたそうだが、結局はそれも出来ず、燃え朽ちようとする屋敷から命からがら逃げ出し、呆然としているところを、駆け付けた二宮によって保護された。
二宮が発見した時の照は、全身に軽い火傷を負っていて、肌が焼け爛れている所もあったそうだ。
茫然自失と言った状態の照を見兼ねた二宮は、照を知り合いの伝手を通じて病院へと運び込んだ。
病院、とは言っても、闇医者だったそうだが…
たとえ母様の命だったとは言え、放火は極刑にも値する大罪。
あの火事で焼け死んでしまったことにすれば、照を警察の捜査の目から逸らすことが出来る…、二宮はそう考えていたそうだ。
尤も、あの火事のせいで照の顔は焼け爛れ、以前の容姿とは判別も出来なかったそうだが…