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愛玩人形【気象系BL】

第11章 信愛…


翌朝、少し早めに目を覚ました僕は、眠っている智子を起こさないよう部屋を出ると、母屋に向かった。

「すいません、無理を言ってしまって…」

頭を下げた僕を、潤の母親は笑顔で迎えてくれた。

「ほら、お父様がお迎えにいらしたわよ。智翔ちゃん、とってもいい子でしたよ?」

僕は智翔を受け取ると、きょとんとした顔に頬を擦り寄せた。

ほんの数時間離れていただけなのに、心做しか智翔が大きくなったように見えるのは、僕の気のせいなんだろうか…

「そうか、すごいなぁ、智翔は」

褒められたのが分かったのか、智翔が僕の腕の中できゃきゃっと声を上げて笑った。

「まあ、智翔ちゃんはお父様が好きなのね?」

こんなに小さいのに?

僕はなんだか胸の奥が擽ったくなるのを感じた。

「ささ、早く智翔ちゃんにお母様のお乳を吸わせて上げて?」

「そうですね」

僕は簡単に礼を済ませると、智翔を腕に抱いて、智子の待つ離へと戻った。

「智子、智翔を連れて来たよ?」

まだ寝ている智子の耳元に声をかけると、何度か睫毛を瞬かせてから、智子がゆっくりと瞼を開いた。

「まあ智翔なのね? ああ、会いたかったわ」

智翔がいないことが余程寂しかったのか、僕の腕から智翔を引き取った智子は、まるで人形を抱くかのように智翔を強く抱きしめた。

「あ、智翔智子のお乳が恋しいそうだよ? 吸わせてやったら?」

「まあ、智子のお乳が…? 智翔は食いしん坊さんなのね?」

くすくす笑いながら、智子は寝巻きの肩を落とし、白い肌を露にすると、小さな乳房を智翔に吸わせた。

「智子もすっかりお母さんだね?」

「そうよ? 兄さま知らなかったの? 智子、智翔のお母さんなのよ?」

そう言って笑った智子の顔は、いつだったか西洋の本で見た、基督を抱く聖母のようだった。


『信愛…』〜完〜
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