第2章 初恋…
潤が救急箱の中から消毒液やら脱脂綿を取り出しては、智子の傷の手当をしていくのを、僕は壁に凭れて無言で見ていた。
「痛むかい?」
潤が聞けば、”ううん”と小さく首を振って応える智子。
その目には、少しだけ涙が浮かんでいて…
智子が顔を顰める度、僕の胸がズキンと痛んだ。
僕のせいで…
そう思ったら、もうそれ以上のその光景を見ていられなくて、
「あの…、手当が終わったら救急箱は廊下にでも置いといてください。僕が後で照に返しておきますから…」
僕はそれだけを言い残すと、二人を残して智子の部屋を出た。
そして今にも叫び出しそうな心を抱えたまま自室へと駆け込むと、そのままベットへと身を沈めた。
柔らかい枕に顔を埋めると、僕は悔しさに溢れる涙を止めることなく流した。
智子の綺麗な顔に傷をつけたのは僕だ!
僕があの時智子を抱き締めたりしなければ、こんなことにはならなかったんだ。
僕が…、僕のせいだ!
僕が智子を…好きになってしまったから…
妹だって分かってる。
それでも僕は気付いてしまったんだ…
智子を抱き締めた瞬間…いや、本当はもっと前から気付いていたのかもしれない。
僕は自分の気持ちに蓋をしてきたんだ…智子は妹なんだから、って…
でももう無理だ…
僕の想いは溢れ出してしまったんだ…
パンドラの箱は開いてしまったんだ。
智子…君を誰にも渡さない…
「初恋…」~完~