第9章 惑乱…
「しかし驚いたな、まさかお前が子供までこさえてるとは…。恐れ入ったよ」
二宮が畳にゴロリと横になり、にやにやと笑いながら俺を見上げる。
僕だって考えたことすらなかったよ。
ただ智子と愛し合いたい…その思いだけで我武者羅に智子を抱いたんだから…。
その結果、まさか子供が出来るなんて…
考えてもいなかった。
「なあ、さっきの話だけど…。真剣に考えてくれないか? 迷惑かけるとか、余計なこと考えずにさ…」
「でも…」
「お前には幸せになって欲しいんだよ、俺達みたいにな…」
「二宮君…」
確かに僕の目から見ても、今の二宮君は幸せそのものの状態に映る。
だからこそ、その幸せを壊すような真似だけはしたくない。
「ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ。でももしも…もしも本当にどうしようもなくなったら、その時は…もしかしたら…」
君を頼ってしまうかもしれない。
「ああ、遠慮はいらないぜ? それに、俺もお袋もこの界隈で知らない奴はいないからな。いざとなったら…」
徐に起き上がって、両手に唾を吐きかけ、指の関節をいくつか鳴らした。
「くく…、君みたいな友人を持って、僕は幸せだよ」
出来ることなら、暴力沙汰だけは御免だけどね…