第14章 本日の近侍 山姥切国広その2
本日は快晴なり。
今日は洗濯日和だと、洗濯当番の歌仙が満遍の笑みで敷布を物干し竿に掛ける姿が、この部屋からでも見える。
少し離れたところでは、五虎退の虎たちが蝶々を追いかけて走り回り、その虎たちを粟田口の短刀達が追いかける姿も見えた。
手元には、鶯丸が淹れてくれた茶と、平野藤四郎から貰った茶菓子。
時折涼しい風が室内に入り、とにかく快適で、気付けば瞼が重い。
急ぎの仕事は、多分ない。
否、この眠気を前にしては、全部どうでもいい。
もう、このまま寝てしまえ。
そう思ってころんと横になった。
「…………」
「おいっ!!」
「…………え?」
昼寝をしてから、どの位経ったのだろう。
突然大きな声で呼ばれ、ぼんやりとしながら辺りを見る。
あれ、ここ何処だろう。
目の前では、誰かが部屋を右往左往している。
何やら、慌てて部屋を片付けているようだ。
「え…………誰?」
「はっ!?……寝ぼけているのか?」
信じられないというような表情で振り返ったのは、見覚えのある顔。
本日の近侍、山姥切国広だった。
その瞬間、一気に目が開いたような気がした。
「あっ!」
思い出した。
「あんた……一体何故、俺の部屋にいるんだ」
私、山姥切の部屋に来てたんだった。
「えっと……それは」
近侍の山姥切に書類確認してもらうついでに、お茶でもと部屋にやってきたけれど、部屋はもぬけの殻。
彼を探し歩く気にもなれず、仕方なく室内で待っていたのだ。
けど、待てど暮らせど戻って来ず。
ついには眠ってしまった、と。
「それで、一体いつまでここにいるつもりだ?」
「あ、明日まで?なんちゃって……」
冗談を言った途端、山姥切の表情が固まる。
あっと口を開けたまま、固まること数秒。
何か言おうとしては、口を閉じてしまった。