第11章 本日の近侍 ※山姥切国広R18
写しの俺なんかが、あんたを好きだって言ったら、あんたはどう思うだろうな。
近侍の仕事は嫌いだ。
主と審神者部屋に二人きりで黙々と書類整理するのが特に。
こんのすけがいれば、多少の会話もあるが、二人きりとなると沈黙しかない。
他のヤツなら、ユーモアのある話の一つでもするだろう。
だが、俺には無理だ。
そのせいか、主はさっきからずっと黙ったまま、真剣な表情で政府からの書類を読んでいる。
彼女は、俺が横からジッと見ていても、全く気付かない。
俺が写しだからか。
見る価値もない俺には視線すらくれないというのだろうか。
「…………」
おい、こっちを見ろ。
そう強く念じても、彼女の視線は書類に留まったまま。
やっぱり、写しの俺に霊力なんかないんだ。
「あの……山姥切?」
「なんだ」
やっと声を掛けてくれた。
なんだろう。そろそろ休憩の時間だろうか。
茶でも用意するか、菓子は何を用意すれば喜ぶだろうか。
「違っていたらごめん、何か私に言いたいことでも……あるのかな?」
「……は?」
言いたいこと……だと?
ある。あるにはある。
けど、言えるわけないじゃないか。
それともあれか、写しの俺に何かを期待してるのか?
「えっと、さっきから視線を感じるというか……睨まれてるなって思って」
睨んでは……ない。
視線には気付いていたのか。
いつからだ。
最初からか?
気付かないふりでもしてたのか?
「それは……っ」
頭の中で考えがまとまらず、イライラしてきた。
彼女は俺の言葉を待っているのか、俺の近くに座り直し、顔を覗き込むように見てきた。
彼女との距離が近い。
顔も、体も近過ぎて、色々やばい。
「や……めろ、俺なんか見るな」
ほんの軽く、肩を押しただけのつもりだった。
なのに、あまりに彼女の体が軽過ぎてそのまま体が後ろに倒れ込み、押し倒したような体勢になってしまった。