第9章 混み合った電車の中で ※加州清光R18
朝、混み合った電車には様々な人でごった返している。
仕事に行く人、学校に行く人。
私もその中の一人だ。
そして、毎朝同じ時間、同じ駅から乗るあの人も、その一人だ。
彼の存在を意識し出したのは、つい最近。
人形のような白い肌と、整った顔。
男性なのに鮮やかに紅いマニキュアをしている男性。
私にとって、癒しの存在だ。
彼が近くにいるとほんのりといい香りがする。
だからつい、彼のそばに寄ってしまう。
その日も、電車の中で私はラッシュに押しつぶされそうになりながら立っていた。
私がドア付近に立ち、その後ろには彼がいた。
今朝も相変わらず格好いい。
電車の窓にうっすらとうつる彼の顔を見ると、つい見入ってしまいそうになる。
彼女はいるのかな。
どこに勤めているのかな。
そんな事を考えていると、ふとおしりに違和感を感じた。
「…………」
まさかね。
こんなに混んでいるのだ。
きっと、鞄がちょっと触れただけ。
そう思って、気にしないようにした。
胸元に抱えた鞄をぎゅっと握りしめ、ふっとため息をついたとき、だった。
「ふぁっ!」
今度ははっきりと、お尻を撫でられる感覚がした。
むにむにと優しく、感触を確かめるような手つきで。
どうしよう。
絶対触られてる。
しかも、触られているのはすぐ後ろから、だと思う。
けど、彼がこんなことするだろうか。
どうしたらよいのかと考えている間も、手は私のお尻や腿をすりすりと撫で、ゆっくりとスカート中へと入ってくる。
「……っ!?」
恥ずかしくて、つい下を向いてしまいそうになるが、意を決して窓に映る彼の表情を伺う。
私の背後に立つ彼と窓越しに目が合ってしまった。
そして、憧れの彼はふっと妖しく微笑んだのだ。