第31章 沖田総司の脇差※三日月宗近R18夢
その日、私が隊長を務める第三部隊は、出陣先から戻り、時空門から本丸までの石畳を歩いていた。
中傷一振り、軽傷三振りをだしてしまったが、勝利を収めることは出来た。
本丸に戻り、各々自室か手入れ部屋へと向かおうとしている中、私は彼らとは逆方向へと進もうとしていた。
そこへ、誰かに声をかけられる。
「霧雨さん、手入れ部屋には行かないの?」
そう声を掛けてくれたのは、私と同じ脇差の堀川国広だった。
彼は新撰組の土方歳三の愛刀。
私と同じ新撰組ゆかりの刀だが、私より早く顕現しているから練度も高い。
まだ顕現して日の浅い私と違い、戦慣れしている堀川は、今日の出陣では傷一つ負っていない。
対して私は……。
「うん。私は軽傷程度だし、まずは主に戦績報告してくるよ」
「そっか。霧雨さん、隊長ですもんね。けど、無理は禁物ですからね!」
精一杯の作り笑顔をする私に、堀川は自然な笑顔で返した。
彼の笑顔が曇りないものだからか、その表情にズキンと痛む。
堀川は笑顔のまま手を振ると、踵を返して行った。
多分、和泉守兼定のところだろう。
出陣から戻って早々、和泉守と稽古するのか、戦績報告をするのかもしれない。
正直言って、羨ましい。
私も同じ新撰組ゆかりの刀だが、やはり刀剣女士と男士では何かよくわからない壁を感じる。
それだけじゃないのも、わかってはいるけど。
まあ、気にしても仕方ないのかもしれない。
女士なのは、変えられないからね。
堀川の背中が見えなくなるまで見送ると、主の部屋に向かって歩き出した。