第29章 沖田総司の脇差 零章※へし切長谷部
「私は霧雨、国重お源が打った唯一の脇差。新撰組、沖田総司の愛刀だよ!あ、女国重って呼ばないでね!私には『霧雨』っていう、かつての主がつけた立派な号があるんだから!!」
とある時代、とある本丸に顕現した、刀の付喪神。
審神者によって肉体を得た私だけど、初めて見た光景は、不思議なものでも見るような顔をした、一人と、一振り。
「女の子……だね」
「ああ……」
一人は審神者、なのかな。
紅玉みたいな真っ赤な目をした、女の人。
もう一振りは、誰だろう。わかんないや。
「……私、もしかしてお呼びでない?」
困ったなぁ。
刀の頃はよく、女が鍛えた刀なんてって蔑まれて使ってもらえなかったこともあったけど。
それでも、私を使ってくれた人もいたんだよ。
嫌だなぁ。
この姿になっても、使ってもらえないのかな。
首を傾げる私に、審神者はハッとした表情をした。
「ごめんなさい。私、刀剣女士を顕現するのは初めてなの。だから、びっくりしちゃったの。気を悪くさせたのなら、ごめんなさい」
「本当?女だからって、使わないとか言わない?」
「言わないよ!むしろ、私以外にも女の子がきてくれて嬉しい」
審神者はにこにこと嬉しそうにしながら、隣に立つ一振りを見た。
「紹介するね、彼は山姥切国広。私の近侍だよ」
「山姥切国広だ、この本丸では一番の古株ってやつだ。わからないことは俺……いや、他のやつでも答えられるだろう」
え、他のやつって言われても。
話しかけられたくないのかな。
困惑した表情をした私に、審神者はにっこりと笑う。
彼女は笑った顔が可愛くて、愛らしい人。
よかった。
新しい主は、いい人みたい。