第4章 本丸の終わり 加州清光
時計が0時を告げ、鐘が鳴る。
「ねえ桜……起きてる?」
背中越しに声を掛けられ、桜はもぞもぞと身動いだ。
「まだ起きてるよ」
「桜……どうするか、決めたの?」
「ん……、決めたよ。私、清光やみんなと過ごした本丸でのこと、忘れずに現世に戻りたい」
桜は清光の方を向くと、笑顔で答えた。
「大切な記憶だもん。忘れるなんて出来ない。それに……」
桜は清光の手をとると、彼の手をギュッと握りしめた。
「何より、私が清光のこと好きだってこと、忘れたくないよ」
「そうだね。けど俺は、桜が俺のこと忘れてしまっても……ずっと好きだよ」
清光も桜の手を握り返し、寂しげに笑った。
「……明日が来なければいいのにな」
桜は溜め息をついた。