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ショートなR18妄想【刀剣乱舞】

第22章 路地裏アンアン IN へし切長谷部


その日、空を突然の黒い雲が覆い、雨が大地を濡らしていた。
雨は次第に激しくなり、何もかも洗い流すほど。

そんな中、彼女は傘をささずに歩いていた。
衣服は雨で濡れ、体は芯まで冷え切っていたが、急ぐこともなく、ゆっくりと、体を引きずるように歩く。

瞳は何も映していないかのような、空虚な瞳。
何も持たず、両の手はだらんと垂らしていた。

「このまま、雨に溶けていなくなってしまいたい……」

頰を伝う雫は、雨なのか涙かもわからず、ポツリと地へ落ちる。
地に落ちた雫は土に消えていくが、彼女の存在も、彼女が感じている陰鬱な気持ちも、消えてはくれない。

「主っ!」

俯いて歩く桜の耳に、聞き慣れた声届く。
それでも、彼女は顔を上げることもなく、黙ったまま歩いていると、誰かの足元が彼女の視界に入った。

「主……!一体どうしたのですか!?」

この声は、へし切長谷部だ。
桜を主と呼んで慕い、どのような時でも彼女の味方でいてくれる。
今だって、帰りの遅い桜を心配して迎えにきたのだろう。
だが今は、そんな彼の優しさに桜は素直に甘える事が出来なかった。

「…………」

「何故傘もささずに、こんなに濡れて……!」

長谷部は急いで桜の傍らに立ち、傘を差し出すが、桜はその手を払った。

「いいの。放っておいて……」

「何を……すぐに本丸に戻りましょう。風邪を引いてしまいます!」

「まだ、帰りたくない。こんな……こんなに酷い姿、みんなに見せたくない」

長谷部は俯く桜をしばらく見つめると、桜の肩を抱いた。
放っておいてと言われたが、言う通りに出来るわけがない。

「帰りたくないのでしたら……せめて、雨宿りくらいはしましょう」

長谷部は桜の肩を抱いたまま、彼女と並んで歩き始める。
桜は俯いたまま、長谷部に導かれるまま歩いて行った。

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