第21章 路地裏イチャイチャ IN 不動行光
ザアザアと降りしきる雨の中、私はさまよっていた。
力の足跡を頼りに、傘を片手に彼を探す。
雨の日は、気が乱れる。
おかげでなかなか彼のことを探せなかったが、薄暗い路地裏でようやく彼を見つけることが出来た。
「…………不動」
飲み干した甘酒の瓶を傍に起き、小さくうずくまる彼。
かつて、織田信長公が愛した短刀、不動行光。
信長公を守れなかったことを悔やむ彼は、いつも自分をダメ刀と卑下している。
そんな彼を近侍にしたこの日、彼はあることをして本丸を飛び出して行った。
「不動……帰ろう?」
「……いやだ」
うずくまったまま、不動は立ち上がろうとも、こちらを見ようともしない。
「俺……俺は、愛された分を主に返すことが出来ない、ダメ刀だよ!」
「そんなこと……」
そんなことない。
そう言おうとすると、不動は顔を上げ、泣き顔で叫んだ。
「俺みたいなヤツ、主のそばにいない方がいいんだよっ!」
「そんな……そんなこと、言わないで」
不動のすぐそばに行き、彼の隣に座る。
手巾を取り出し、そっと彼の涙を拭うと、彼は恥ずかしそうに顔を背けた。
「不動、誰だって一度は失敗するよ。長谷部だって……さ、あるよ?」
「長谷部も……か?」
長谷部も、という言葉が気になったのか、もっとその話が聞きたいと言わんばかりの表情で振り返った。
やはり、同じ信長公の刀だったからか、近侍になる機会が多い長谷部を意識してしまうのだろう。
「うん、何回も。だから、刀装作成に一度失敗したくらいで……そんなに落ち込まないで」
「刀装だけじゃない、遠征や内番だって……」
確かに。
ちょっと今日は失敗が続いたかもしれない。
けど、最初は誰だってそんなもんだ。
「ん……じゃあ、違うやり方で愛情返してみる?」
「どうせ、また失敗するさ」
「大丈夫!これは、すっごく簡単。一緒で愛情返せる……やってみる?」
思いつきだったが、これで不動を元気づけられるなら。
そんな軽い気持ちだった。
「やる!」
だって、他の短刀の子にもやっている。
寝る前とか、不意打ちでも。
ほっぺに、だが。