第20章 路地裏イチャイチャ? IN 三日月宗近
「思い出せ桜、俺を……そして全てを」
「え……!?」
すっと三日月の指先が額を撫で、前髪をかきあげた。
「桜、数多の刃従えし我が主よ。我が名において、その記憶を解放する。今再び……そなたの力が必要だ」
力強く、けれど哀しげにそう言うと、三日月は桜の額にそっと口付けた。
唇が触れたところが熱く、そこから熱が駆け抜け、身体が燃えるように熱くなっていく。
「すまない……桜」
三日月は切なげに顔を歪ませると、桜の頬に手を添える。
どうして、そんな顔をするのだろう。
桜がそう思っていると、彼の顔が近付き、お互いの唇が重なった。
「ん……っ!」
優しく口付けたかと思えば、荒々しく呼吸を奪うような口付け。
三日月の舌が唇をこじ開け、桜の口内に熱い舌が侵入する。
ねっとりとした舌が桜の舌を捕らえると、濃厚に擦り合わされ、桜はその刺激に身体の力が抜けてしまう。
「んっ……あ……ぁっ」
柔らかくて、暖かい。
うっとりとしてしまいそうな、甘い感覚。
そうだ、私はこの感じを……知っている。
どうして忘れていたのだろう。
あんなに、愛していたのに。
「……っ!」
脳裏に次々よぎる、数々の記憶。
楽しかった日々。
そして……戦いの日々。
その全てが桜の身体や、心に蘇る。
あんなに……辛い思いをしたのに。
どうして、また思い出さなきゃいけないの?
「……桜」
審神者と近侍。
そして恋仲だった頃と同じように、三日月が彼女を見つめる瞳は優しく、いつだって桜を惹きつける。
昔も、今も。
「思い出した……か」
桜がコクリと頷くと、三日月は桜の濡れた唇を指先で拭った。
「すまない桜、そなたには平和な世界で生きていてもらいたかったのに」
平和な世界……か。
また戦うんだ私。
また、貴方を戦場に送らなきゃならないんだ。
「いいの、三日月……」
平和な日は、今日でお終い。
私一人だけの平和じゃ、意味がない。
私はまた、戦う。
貴方と共に。
今度こそ、貴方との平和な世界を生きるために。
終