第16章 愛してる※加州清光極R18
「ねぇ、まだ終わらないの?」
「ん……もうちょっと」
審神者の仕事は、書類書きに始まり、書類書きに終わる。
遠征に行けば書類、出陣すれば報告、鍛刀、演練、その他諸々するのも書類。
書類の山だ。
この日も私は朝から書類に追われ、近侍の加州清光が休憩しろと何度も忠告しに来ていた。
「手伝おうか?」
「んー、あとこれまとめるだけだから平気ー」
手伝ってもらうような仕事でもなく、私はひたすら書類を書き続ける。
「そろそろ休憩、したほうがいいよ?」
「もうちょっとだから」
「さっきからソレ、何度も言ってる」
言ってる自覚、確かにあります。
けれど、どうしてもキリのいいところで終わらせてしまいたい。
けど、そこまで進めると、もう少し先に進みたいと思ってしまう。
さっきからその繰り返しだ。
おかげで、清光の機嫌は悪くなるばかり。
あーあ、完全に拗ねてるね。あの表情は。
「……そっちがその気なら、こうだ!」
「えっ?わっ、ちょっと!?」
突然、清光に肩をグッと押され、体制を崩した私は、そのまま後ろへ倒れこむ。
「清光、なにする……の」
ふと見上げると、清光に押し倒されているような態勢になっていた。
清光との近すぎる距離に私は恥ずかしくなって目を背ける。
「なに?」
「それ、私の台詞なんだけど……ぁっ」
清光が私の首元に顔を埋めると、チュッと私の耳に口付ける。
「……汗のにおいがするね」
「やっ、ごめん!わたし、汗くさい!?」
慌てて清光から離それようとすると、それを制止するように彼は私の体を抱きしめた。
「そんなことないよ。むしろ、好き……」
また、そう言って耳に口付ける。
耳たぶを甘噛みされ、私の体はびくりと震えてしまう。
「ねぇ、主。俺、主に愛されてる?」
「………」
清光の、赤くて綺麗な瞳が好きだ。
白い肌に映える、その赤い瞳も、私を呼ぶ声も、
ぜんぶ、全部が好き。
どのような言葉を使えば、彼に伝わるのだろう。
上手く言葉にして伝えられない私を、清光はただ微笑む。
「主……」
どのくらい、見つめ合っていただろう。
それから、優しく口付けされた。