第15章 不器用な大倶利伽羅の話。
まもなくお八つ時。
小腹をすかせた桜は、厨に訪れていた。
「こんにちは、燭台切さん。何を作っているのですか?」
「やぁ桜ちゃん、今はね伽羅ちゃんに頼まれた……」
燭台切が桜に話そうとすると、そこへ大倶利伽羅が厨に訪れた。
「あ、大倶利伽羅さん!」
「……っ!?」
「伽羅ちゃん、ごめんまだ……」
燭台切が大倶利伽羅に話しかけるが、大倶利伽羅は燭台切の言葉を聞かずに立ち去った。
「伽羅ちゃん?」
大倶利伽羅はおそらく、燭台切に用があったのだろう。
だが、桜の顔を見るや否や、さっさと厨から出て言ってしまった。
「行っちゃいました……ね」
桜は淋しそうに呟いた。
「そうだね……確か今日の近侍は伽羅ちゃんだったよね。伽羅ちゃんとは、どう?」
「大倶利伽羅さんは、優しいのですが……とても無口な方」
確かに。
口数が多いとは言えないし、他の男士達ともあまり言葉を交わさない。
燭台切は、せめて主である桜ともっと関わってもらいたいと思っていた。
だが、桜の口ぶりでは、あまり桜と関わってもいないようだ。
燭台切は、どうしたものかと考えあぐねていると、隣に立つ桜が声を上げた。