第14章 本日の近侍 山姥切国広その2
「今夜、俺と共寝をするのは本当かって聞いたんだっ!!」
おっと、共寝するのかまで言わせてしまったよ。
顔真っ赤にして、拳そんなに強く握り締めて。
なんだか申し訳ない気分になってしまった。
ごめんね、恥ずかしがり屋の山姥切。
何気なく言った私の言葉が嬉しかったんだよね、きっと。
からかってごめんなさい。
「……山姥切は、どうしたい?」
けど、もうちょっとその可愛い顔見たいな。
申し訳ないと思いつつ、つい言ってしまった。
「っ!?お、俺は………………したい」
掴まれていた手を引き寄せられ、山姥切との距離がグッと近くなる。
気付けば、私は彼の腕の中に閉じ込められていた。
「わっ、山姥切……っ」
「あんたは、本当は俺なんかと共寝なんかしたくないんだろう。わかってるさ。さっきの言葉だって、冗談だってことくらい……」
ぎゅっと抱きしめる手が強くなる。
「ねぇ、山姥切」
「……なんだ?」
「私も、山姥切と一緒に寝たい。明日までここにいてもいい?」
山姥切は黙ったまま、コクンと頷いた。
もう、耳まで真っ赤だ。
「あとさ……」
調子に乗るなと言われてもいい。
けど、今が絶好のチャンスなんだ。
「山姥切……あのさ。ちょっとだけ、私のこと名前で呼んでみてよ。お願い」
「なっ……、急にっ…………」
彼は顔を真っ赤にしたまま、コイツは何を言っているんだと言うような表情をした。
それでも、私が真剣な表情をしていたからか、彼は観念したようだ。
「…………桜」
聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で彼は言った。
恥ずかしくても、ちゃんと言ってくれたことがたまらなく嬉しい。
「……もう一回」
「……っ!?……桜、もう、何回も……言わせるな」
あ、どうしよう。
こんな風に、山姥切が恥ずかしがる顔を見るの、楽しい。
その表情、きっと癖になる。
そう思ったのは、とても良いお天気な日のことなのでした。
終