• テキストサイズ

君想ふ

第3章 土御門と倉橋


一方、遅刻ギリギリで学校に着いた千音。
教室に入ると殆どの生徒が揃っており、友人と駄弁ったり本を読んでいたりと思い思いに過ごしていた。
「千音おはよー!遅刻ギリギリなんて珍しいね」
「香純おはよー。まぁ…ちょっとゆっくりしすぎちゃってね…あはは…」
倉橋香純、千音の親友であり陰陽師の家系"倉橋"の次代当主と云われている少女だ。
「倉橋ー!ちょっと手伝ってくれー!」
「はーい!ごめん千音、呼ばれちゃったから行ってくるね」
「うん。頑張ってね」
そう言い残して香純は先生の所へ向かった。
男女問わず人気があり、教師からも信頼されている。…陰陽師名家の縁とはいえ、私なんかと親友でいてくれるのが不思議でならないくらいの人物。
そう。私とは殆どのことが正反対なのだ。
(それもそうか。土御門家の次代候補とはいえ私は落ちこぼれ。香純は次代第一候補の優等生なんだもの)
本家の人間は私なんかに期待なんてしていない。実力がすべての土御門家は例え分家であろうと実力があるのなら当主に据えるような家だ。そんな中で本家の人間でありながら"異端者"で実力のない私が当主に選ばれるはずもない。
「異端者、か…」
窓から空を見上げて呟く。本家の人間の思想を見聞きするたび、どうしても分からなくなってしまう。
人と妖が共に生きてゆくことは不可能なのだろうか、と。
(私は…どうするべきなのかな…)
まだ見習い段階とはいえ陰陽師側にいる現状で、人間を取るか妖を取るか――人と妖、両方を取るか。
(…解ってる。今の状態じゃそんなの絵空事でしかないって。でも不可能なんて思いなくない…)
嘗ての先祖が、そうであったように。
/ 22ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp