第8章 信じる事
ダンテが、人間じゃない。
重たいものが頭に乗っている気がした。頭に浮かぶのは、ダンテの優しい顔ばかり。
しかし目の前にいる実際のダンテは傷だらけで血だらけで、表情は悲痛そのもの。
「 違う! 確かに親父は悪魔だったが、伝説の英雄だ! 黙ってたのは悪かった…」
「様。耳を貸す必要はありません。私と共に…」
双方からくる言葉。耳を塞ぎたくなる。
私は何を信じたらいい? どっちを信じればいいの?
ライアの声には力が込もっているようだ。
抗えない。疑えない。
ハッキリ嘘だと思えなかった。
おびただしい血を流しているのに、ダンテは全く倒れる気配がなくて。
人間ではないと聞かされると、本当に人間じみて見えなくなっていて。
はのろのろとダンテの方を向く。その目は今にも押し潰されそうに弱い。
「ダンテ…私を好きだって言ったの、嘘だったの?」
「違う!!」
ダンテは叫ぶ。
「俺はお前の事が好きだ! おかしくなっちまいそうなくらいにな!」
普段のであれば、それに嬉しそうに笑うだろう。
しかし今はそれに何も反応せず、今度はライアの方を見た。
「神の娘って、なに?」
ライアは淡々と答える。
「異世界から来た人間を、私はそう読んでいます。類稀な可能性のもとにこの世界にやって来た方を保護し、お世話をさせて頂いているのです」
「の世話は俺で間に合ってんだよ。失せろ」
「黙れ。出来損ないが」
一瞬にして冷えるライア。
彼が指を動かすと、ダンテはうめいた。
「つ……ちっくしょ… 妙な技使いやがる…」
は二人を見比べていた。それを見てダンテは、急速に不安になる。
まさかライアと共に行くんじゃないだろうか。
せっかく一緒になれたのに。
なったばかりなのに。
───冗談じゃねぇ。行かせるか!
重い沈黙が場を支配した。
まるで約束されたように、誰も何も言わなかった。
しかし、しばらくして。
は哀しそうにダンテを見た後、ライアの方を向き。
「ライア…」